「勤怠管理はExcelでやっています」
中小企業の経営者や総務担当者と話すと、今でもこの回答が非常に多い。手書きタイムカードや自作のExcelシートで毎月30〜40時間以上かけて勤怠を集計しているケースも珍しくない。
しかし2019年の働き方改革法施行以降、客観的な方法による労働時間の記録が法律上の義務になった。Excelや手書きは「客観的な記録方法」として認められないケースがある。2026年現在、まだ未対応の中小企業は36協定違反のリスクを抱えている可能性がある。
本記事では、クラウド勤怠管理ツールへの移行で実際に月40時間以上の集計作業を5時間以下に削減した事例と、3つの主要ツールの比較・導入手順を解説する。

中小企業の勤怠管理の現状——今もExcelと紙が主流
厚生労働省の調査(2023年)によれば、従業員50人未満の中小企業の約42%が「タイムカードまたはExcel」で勤怠管理をしている。クラウド勤怠管理ツールの導入率はまだ30%程度だ。
「Excelで十分」と思っている経営者も多いが、現場では以下の問題が慢性化している:
- 打刻忘れ・転記ミスが月に数件発生し、修正対応に時間がかかる
- 残業時間の集計が締め日前後に集中し、担当者の残業が増える
- 有休管理が別のファイルで行われ、残日数の確認に時間がかかる
- 月次での給与計算ソフトへのデータ転記がすべて手作業
Excelで勤怠管理するリスク——36協定違反にも
2019年4月の働き方改革法施行により、月45時間・年360時間の残業上限が法律上義務化された。違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則もある。
問題は「正確な残業時間を把握できていない」ケースだ。Excelで自己申告式の勤怠管理をしていると、従業員が「申告しづらい」と感じて実際の残業を少なく申告するケースが起きやすい。これは経営者も気づかないまま36協定違反状態になるリスクをはらんでいる。
クラウド勤怠管理ツールは客観的な記録(ICカード・顔認証・GPS打刻)を自動で取得するため、自己申告による不正確さを排除できる。
クラウド勤怠管理3ツール比較
| ツール | 月額(30人規模) | 打刻方法 | 給与計算連携 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|
| KING OF TIME | 約4,500円(150円/人) | 12種類(IC・顔認証・スマホGPS等) | 各社連携可 | 現場打刻が多い製造・建設・飲食 |
| freee人事労務 | 約15,000円〜 | スマホ・PC・IC | freee給与と完全連携 | 給与計算・社保手続きまで一括したい小規模 |
| マネーフォワード勤怠 | 約8,000円〜 | スマホ・PC・IC | MFクラウド会計と連携 | 会計・請求書管理との連携を重視する企業 |
KING OF TIME——現場打刻に強い老舗ツール
2005年から提供されている国内最大手のクラウド勤怠管理ツール。最大の強みは打刻方法の豊富さ(12種類)だ。ICカード・指紋認証・顔認証・スマホGPS・QRコードなど、現場の環境に合わせた打刻方法を選べる。
価格は1人あたり月150円(税別)と業界最安水準。30人規模で月4,500円から始められる。シフト管理機能も充実しており、シフトの自動作成・承認・従業員への通知も自動化できる。
製造業・建設業・飲食業など「現場でのICカード打刻」が必要な企業に特に適している。
freee人事労務——給与計算まで一括できる小規模向け
クラウド会計ソフト「freee」が提供する人事労務プラットフォーム。勤怠管理だけでなく、給与計算・年末調整・社会保険手続きまで一括対応できる点が最大の差別化ポイントだ。
月額はやや高め(30人規模で15,000円前後)だが、給与計算ソフトの費用と合算すると逆に割安になるケースもある。「勤怠・給与・社保」をバラバラのソフトで管理している企業には特に効果が大きい。
マネーフォワード勤怠——会計ソフトと連携したい企業向け
「マネーフォワード クラウド会計」をすでに使っている企業に最も導入しやすい。勤怠データが自動で会計データに反映されるため、月次の人件費集計・経費処理の手間が大きく減る。30人規模で月8,000円前後。設定画面が直感的で、IT担当者がいない企業でも導入しやすい。
導入後の工数削減効果——月40時間→月5時間の事例

製造業D社(従業員32名)でKING OF TIMEを導入した事例。導入前の勤怠管理工数:
- 勤怠データ入力・集計:月20時間(毎日のExcel転記)
- 残業申請の処理:月8時間(紙の申請書の承認・ファイリング)
- 有休残日数の管理:月6時間(個別ファイルの更新)
- 給与ソフトへのデータ転記:月5時間
- ミス修正・問い合わせ対応:月3時間
- 合計:月42時間
KING OF TIME導入3ヶ月後の工数:
- データ入力・集計:月2時間(異常データの確認のみ)
- 残業申請処理:月1時間(スマホ上で承認するだけ)
- 有休管理:月30分(システムが自動更新)
- 給与ソフト連携:月1時間(CSV出力・取り込みのみ)
- ミス修正:月30分(大幅減)
- 合計:月約5時間(88%削減)
削減された37時間分の作業は、担当者の残業時間の削減と、より付加価値の高い業務(採用・人材育成等)への転換に活用されている。
クラウド勤怠管理の導入手順——最初の1ヶ月でやること
- Week1:無料トライアルを申し込む(3ツールともトライアル期間あり)→ 自社の打刻方法・給与ソフトとの連携を確認
- Week2:従業員マスタの登録・打刻端末の設置(ICカードリーダー等)→ 管理者向けの操作説明
- Week3:テスト運用(現行のExcelと並行して1ヶ月試す)→ 従業員への操作説明・マニュアル配布
- Week4:テスト月の集計を本番ツールで実施 → 問題なければ翌月から本格移行
IT導入補助金2026年度版では、クラウド勤怠管理ツールも対象になるケースがある(デジタル化基盤導入枠・補助率最大3/4・上限150万円)。導入コストをさらに抑えたい場合は、認定支援機関(商工会議所・中小企業診断士)に相談しよう。
よくある質問
Q. スマホを持っていない従業員がいますが大丈夫ですか?
KING OF TIMEはICカードリーダー(専用端末)での打刻に対応しているため、スマホ不要で運用できる。製造・建設・飲食業などスマホを持ち込みにくい現場でも問題なく導入できる。専用端末は月額数百円でレンタルできるケースが多い。
Q. 既存の給与計算ソフト(弥生給与等)と連携できますか?
KING OF TIME・マネーフォワード勤怠は主要な給与計算ソフト(弥生・給与奉行・PCA等)へのCSVエクスポートに対応している。完全自動連携でなくてもCSV取り込みで十分な場合が多い。freee人事労務は自社の給与計算ソフト(freee給与)との完全連携が強み。
Q. 移行時のデータ(過去の勤怠記録)はどうなりますか?
過去データの移行は原則不要だ。クラウド勤怠管理ツールは「導入後から」記録が蓄積される仕組みで、導入前のデータは既存のExcelや紙で保管しておけば良い(労働基準法上、勤怠記録は3年間の保存義務)。移行月の管理が重複して少し手間がかかるが、通常は1〜2ヶ月の移行期間で安定運用に入れる。



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